狼犬部隊
WOLFHOUNDS
出会いの背景
1933年(昭和8年)
フランスのパリに本部を置く「愛徳童貞会」のシスター・テルミエが率いる4 人のシスターが一ヵ月半の船旅を終え、神戸港に到着。
すぐに大阪田辺の小さな日本家屋に居を定め、西成区に聖心セッツルメント 聖心隣保館(生活困窮者に対するセツルメント事業)を設立し、シスターたちの奉仕が始まりました。無料診療所と託児所が手探りの中で行われ、そのうちに親が養育できない子どもたちも引き取り、家庭の養護に恵まれない子どもの支援が始まりました。
1939年(昭和14年)
不幸にも第二次世界大戦が勃発し、人々は日々の食物にも事欠き、多くの困難と苦しみを耐え忍ぶ生活でしたが、窮地に立ってもシスター達は病人と子どもたちを見放すことなく奉仕は続けられ、ついにシスター・テルミエはチフスに感染し愛の殉教者となりました。
1945年(昭和20年)
第二次世界大戦終戦
戦争が終わったからといって、直ぐに平和がやってきたわけではありません。
いつの時代も戦争の犠牲となるのは子どもたちです。家を焼かれ、親を失い身寄りのない子どもたちは、あてもなく彷徨う浮浪児となりました。
シスターたちは大阪市から旧陸軍兵舎を借り受け、そのようないわゆる戦災孤児たちの保護、母親たちの収容を行いました。しかしこの建物はバラックを応急修理したもので、環境は悪く当然食事も満足に食べさせれる状態ではありませんでした。
シスターたちは、困窮している状況は変わりませんでしたが、それでも女性だけで施設の運営にあたっていました。そのような中、出会ったのが「狼犬部隊」のニックネームを持つ、米国陸軍第27歩兵連隊の兵隊さんでした。
自分たちの所持品と食物との物々交換に行かれたシスターが、たまたまそこに訪れていた米兵との出会いがきっかけとなり、施設の子どもたちへ支援をいただくことになったのです。
1949年(昭和24年)
クリスマス
ヒュー·オライリー軍曹は、赤十字使節団に同行し、十数名の狼犬部隊兵士とともに聖家族の家の子ども達とのクリスマスパーティーを開催しました。
そこで目にした当時の聖家族の家の貧しい状況や、子どもたちのひどい健康状態をまえに、心を痛められました。
施設の悲惨な状態を目の当たりにしたオライリーさんは、仲間の兵士に呼びかけ、パンやチョコレート、寒さを防ぐ毛布や石炭などを持って訪れてくれたのです。
さらにオライリーさんは「給料の一部をこども達のために」と帽子をまわして募金を集める活動から始まり、食物や衣服の調達、建物の修復といった援助を行ってくださいました。
しかしそれだけでなく、オライリーさんの温かい人柄は子どもたちに喜びと希望をもたらしました。
狼犬部隊の兵士と聖家族の家の子どもたちとの友情や互いを尊重する気持ちや信頼につながり、次第に聖家族の家やそこで今を懸命に生きるこども達に深く想いを寄せるという伝統となり、今に至ります。
そうして、この愛の伝統は脈々と受け継がれ発展し、現在では夏期のハワイ招待と冬期のサンタクロースに扮した狼犬部隊兵士による施設訪問が毎年恒例となっており、関わるすべての者の心を豊かにしてくれています。
私たち聖家族の家の子ども達、そして職員は、いたわりの気持ちや思いやりの心を狼犬部隊の兵士の皆さんからいただき、また私たちから狼犬部隊の皆さんへ友情や愛を、そして狼犬部隊の皆さんの健康と平和をお祈りしています。
受け継がれる交流
オライリーさんから受け継がれる 狼犬部隊との交流
夏休みには ハワイの兵隊さんたちのお家へ子どもたちがホームステイに出かけます。
クリスマスになると、兵隊さんたちからの想いを託されたサンタクロースが聖家族の家を訪れます。
米軍有志の方から絵画をプレゼントしていただきました。
2013.11.25
当日の歓迎・贈呈レセプションには、米国軍からのゲストもたくさんお越しになり、また自衛隊からのゲストもご同席いただき、盛大な会となりました。
ホールに飾られたこの絵画は、子ども達を日々見守り、狼犬部隊の皆さんからの温かい想いを伝える愛の象徴となりました。
素晴らしいプレゼントを頂戴し、ありがとうございました。
親愛なる ヒュー・オライリーさん が お亡くなりになりました。
2013.11.25
当施設に長い間ご援助いただいた大恩人である ヒュー・オライリー 氏が2006年6月24日(日本時間)に、ハワイの自宅でご逝去されました。
謹んでお知らせし、ご冥福をお祈りいたします。
2006.06.28
朝日新聞の記事になりました。
中庭に当時の狼犬部隊の支援に感謝した記念碑があります
This plaque has been erected in token of gratitude to the valiant soldiers of the 27TH. infantry regiment “WOLFHOUNDS” eho have been outstandingly generous benefactors of the holy family home. 1951
米國歩兵第二十七「狼犬部隊」連隊勇士たちの「聖家族の家」に対する気高く顕著なる恩恵を感謝する記念のためにこの碑を建てたり。 昭和二十八年
狼犬部隊と聖家族の家の出会いは映画にも
「ニューヨーカー」に掲載されたE・J・カーンの実話小説をもとに「折れた槍」のリチャード・マーフィーが脚本執筆、自ら第1回作品として監督、「地上より永遠に」のバーネット・ガフィが撮影を担当した。
主なる出演者は「俺達は天使じゃない(1955)」のアルド・レイ、「長い灰色の線」のフィル・ケイリー、新人ディック・ヨーク、日本側より木村三津子、斎藤達雄、大川平八郎など。
1955年作品。
原題 Three Stripes in the Sun
製作年 1955年
製作国 アメリカ
配給 コロムビア映画